夢幻作・昔話

夢幻帝國
昔々あるところに80代半ばのお爺さんとお婆さんがいました。
お爺さんもお婆さんも貪欲で、金には目がない夫婦でした。
そんなある日、お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。
〜山〜
お爺さんが山で芝を刈っていると、なんと目の前に巨大な桃の木があらわれました。
その桃の木を見てお爺さんは考えました。
「今頃お婆さんは川で洗濯をしているはずだ。桃を流せばお婆さんは拾うだろう。この桃は大きいから売れば金になるぞ。」
そう考えたお爺さんは早速一番大きな桃を木から取ろうとしました。
しかし、桃は取れる気配がありません。
困ったお爺さんは辺りを見回しました。
すると、今まで無かったはずの看板が木の前に立っています。
お爺さんは
「この看板には桃の取り方が書いてあるに違いない。」
と考え、看板を見ました。その看板にはこのようなことが書いてありました。
『この桃の木、神の木。桃を取った者は必ず後悔するであろう。』
お爺さんはこの看板を読みましたがもはや金のことしか頭に無いお爺さんは気にしません。
それどころか
『看板のくせに生意気な。』
と怒りだし、看板を持っていた芝刈り機(?)で切り倒しました。
お爺さんは気が付きました。
「そうだ、この芝刈り機で桃を取ろう。」
お爺さんは木に登り、桃を切りました。そして、手紙を付けて川へと流しました。
〜川〜
お婆さんが夢中で洗濯をしていると、川上から大きな桃が流れてきました。
お婆さんは洗濯物で網を作り、引き上げました。
そして、家へ持って帰りました。
〜家〜 お爺さん「婆さん、桃は流れてきたかね。」
お婆さん「あら、あの桃お爺さんが流したんですか。」
お爺さん「だって売ると金になりそうじゃないか。」
お婆さん「そうですね。ホッホッホ。」
お爺さん「さて、早速売りに行くか。」
お婆さん「ちょ、お爺さん、あの桃動いてるんですが…。」
お爺さん「ほんとだ、じゃあ割ってみるとしようか。」
二人は桃をちゃぶ台の上に載せ、芝刈り機で切り始めました。
しかし、桃は一向に切れる気配がありません。
お爺さん「しかたない、こうなったら日本刀で切るか。」
お婆さん「そうしましょう」 そして、お爺さんが日本刀の刃を桃に立てた瞬間、桃が真っ二つに割れ、中から赤ん坊が出てきました。
お婆さん「お爺さん!あなた何拾ってきてるんですか!」
お爺さん「ただの桃だと思ったんだ…」
お婆さん「嘘をつくんじゃありません!まさか、浮気してるんじゃないでしょうね!」
お爺さん「そんな、してるはず無いじゃないか。」
お婆さん「いいえ、そうに違いないわ!毎日キャバクラに入り浸ってるんでしょ!もう離婚よ!」
お爺さん「そんな、婆さん…」
お婆さん「うるさいわね!当然その子もあなたが引き取りなさいよ!」
そう言うと婿養子だったお爺さんは家を追い出されました。
お爺さん「家もなくなり、婆さんには離婚され、赤ん坊の食費も馬鹿にならない。あぁ、あのとき桃を取らなければ…」
そう後悔するお爺さんの前に看板が出現しました。その看板にはこう書かれていました。
『ほらね、後悔すると言ったでしょう。ざまあみろ!』
お爺さんは芝刈り機で看板を切り倒そうと思いましたが芝刈り機がないことに気付き、その場にヘナヘナと倒れ込んだそうです…。